美瑠『疲れた~!』
文化祭もサクサクと終わり、誰もいない数学資料室の窓から顔を出し、翔の迎えを待つ。
あの時、翔と女の人が一緒にいるのを見てしまってから、あたしと翔の間には透明な壁があるように思える。
“ガラッ”
扉の開く音に顔を半回転させ扉側を見る。
翔「待った?」
美瑠『ううん。全然待ってないよ?』
本当は待ってたけど,,,と思いながら翔のいる方に歩み寄る。
翔は机に乗った私の鞄を当たり前のように手に持ち、「帰るぞ」と一言。
極々普通にいつもと同じ、普段と何ら変わりなく、お喋りをしながら寮に向かう。
あの女の子が誰なのか聞いた方がいいのか、聞かない方がいいのか、2つの意見が頭でグルグリ回転するものの、結局言わずじまい。
その時、誰かの痛く鋭い視線が私の背中に向けられていることに気が付かなかった。
そんな私は、足音をたてず徐々に徐々に忍び寄る陰に気づかないというのは、言うまでもない。