美瑠『ふぇっ?』


私しかいないはずの敷地に、背後から声がした。

その声と同時に後ろに振り返る。



「なにやってんだよ。」



声が低くて、口調からしても明らかに男の子。


でも薄暗い夜と周りに生い茂る木の影とで誰が立っているのかわからない。

ただ…聞き覚えのある声。



「おい、聞いてんだけど。」


美瑠『へっ?……どなた様?』



言葉に力が入らない。

多分、それは部活帰りだからって理由だけぢゃない。



「俺が誰かわかんねぇ~わけ?」



徐々に近づいて来る男の人。



普段の私なら不審者だと思って逃げてる。


でも、足がすくんで逃げれない。

逃げようとも思わない。


きっと、きっと今の私の心は誰かの暖かい温もりを求めてるから。




美瑠『…黒崎君?』