稚尋が澪を見下ろしている。



 抱きしめられている。












 何もされていないのに、稚尋に見つめられているだけで、胸が異常にしめつけられた。









「はっ……はなしてよ」


 そう稚尋に言ってみても、稚尋は澪の自由を奪っているだけだった。



 やはりどこか、稚尋の表情は抜けきれないようにも見えた。










「だって、お前……俺を見てくれねぇじゃん」









「だって……」



 恥ずかしいから。



















 見たくないじゃないの。






 見れないだけ。







 そう言いたいのに、なかなか言い出せない。



 それがもどかしかった。





「雛とは付き合ってないの……?」







 澪がそう言うと、稚尋はため息をついた。











「うん。俺が好きなのは姫だけだ」




 稚尋はそう言って、澪の髪に触れた。






 くすぐったかった。
















 そんな澪の反応を愉しむかのように、稚尋はゆっくりと澪に近づいた。











「……本当、ね?」







 潤んだ瞳で稚尋にそう確かめると、稚尋はコクンと首を縦に振った。











 そして。



















「お前は……どんだけ俺を好きにさせれば気が済むの? 泣き姫」




「え……?」



 何が。と確かめる前に、稚尋の唇が澪の口を塞いだ。