―――「まじ、大橋百合、いちいちブリッ子しすぎだし。人の男とるなんて、キモくなーい??」





入学して、少しした春の出来事でした。
百合は、…まぁ、俗にいうイジメにあってました。
どーってことのない噂なんだけどね。



それで、偶然この会話を聞いてしまった。



百合にはどーでもいいことだけど、前を横切るには勇気がいるから、壁に沿って隠れてた。




「だいたい、大橋大橋って、男子も騒ぎすぎなわけっ!!あんな子のどこがいいわけ!?」




「男に飢えて、もの欲しげな顔で見てるからじゃなーい??」



大きな笑い声とともに、心をえぐられたかのような痛みが走る。嘘で固められた噂が出来る瞬間を、百合は見た。




……勝手に言ってれば??百合は別に…っ


隅に隠れてモジモジしているときだった。





…腕章をつけた王子様が現れたのは。





「人のことを廊下でどうのこうの言う前に、自分の彼氏に聞いてみたらどうだ。お門違いってやつじゃないのか」




「…はぁ??坂本じゃん。意味分かんないしッ…!!」



女の子たちはバタバタと、顔を赤くして走り去っていった。



突然の出来事にパニックで、頭の中がこんがらがったまま、百合はその場に立ち尽くしていた。



…この人、生徒会長じゃんっ!!でも…、なんで……??




「きみ」


「え?は、はいっ!!」


つい背筋をピンッとして、気をつけをしてしまった。小学生が悪いことして先生に怒られる図。まさにそんなカンジだった。



「気にすることはない。噂なんて真実から離れて、勝手に独り歩きするものだからな」







まぁくんが持ってた学級日誌で、百合の頭をそっと叩いた。


そのまま、まぁくんは歩いていったけど、私はそこで少しの間、つっ立っていた。






このときに知った。




王子様は待ってちゃ来てくれないんだッて……