そもそもあのファイルを読んだあたりから、ヴィクターは様子がおかしかった。

やはり何か知っているのだろうか。

この地下病棟に関する秘密を、彼は握っているのかもしれない。

とりあえず、今はそれよりも。

「逃げましょう!あんな怪物とまともにやり合って勝てる訳ないです!」

食らいつこうとばかりに身を乗り出すヴィクターを、私は必死に制止する。

「くっ…!」

かたやヴィクターも、私に邪魔をされたせいか、僅かに冷静さを取り戻しつつあった。

大男を睨みつつも、まともに張り合う事の分の悪さを感じ取ったらしい。

「くそっ」

私を振り解くように振り向き、走り出す。

よかった、何とか思い直してくれたようだ。

それを確認して、私も走り始めた。