もう一度。

ヴィクターの体がバネのように縮こまる。

その反発を利用しての拳。

しかし。

「待って!」

私はそんな彼を背後から押さえ込んで止めた。

ヴィクターの力に引きずられるような形となるが、それでも辛うじて留めるには役に立った。

「何しやがる!放せ!」

凶暴な声で私に怒鳴るヴィクター。

「駄目ですよ!逃げましょう!」

ヴィクターが何を考えているのか、私には理解できなかった。

あんな怪物に敵愾心を抱くなんてどうかしている。