ペンライトで照らしながら、私と男は廊下を歩き出す。

相変わらずの静寂と暗闇に包まれた地下病棟。

埃やカビの臭いに混じって、微かに薬品臭もする。

ここがかつて病院として機能していた事をうかがわせた。

もっとも、後半からは病院としてではなく、研究室や実験室としての色が濃かったらしいけど…。

「なぁ、あんた」

後ろから男が声をかけてくる。

「その格好…あんた看護師だろ?」

「はい…」

立ち止まって私は振り向いた。

「帝総合病院で看護師をしてます、小野幸羽といいます」

「名前には興味ねえよ」

折角の自己紹介を、彼は一蹴した。

「あんた看護師なのに、真夜中にこんな場所で何やってんだ?」

「えと…それは…その…」

好奇心丸出しで中に入って、結果閉じ込められてしまった。

私は私のドジっぷりを余す所なく正直に話す。

「ふぅん…」

男は少し考えている風だった。

「閉じ込められた…ね…案外狙われてたのかもな」