震える膝に喝を入れ、何とか歩き出す。

ここにいるのは危険だ。

本能が全力でこの場にいるのを否定していた。

振り返り、今来た道を戻ろうとして。

「~~~~~っっ!!!!!」

私は声にならない声を発した。

振り返った先に、男が立っていたのだ。

金色の短髪、鋭い眼光。

痩躯でありながら引き締まった体を持つ野生的な印象の男。

その身には、うちの病院の患者用の手術着をまとっている。

「なぁ、あんた」

私と遭遇するなり、男は突然言った。

「罪なき者って、どんな奴だろうな…?」