そんな希薄な家族関係の中で育った私を「絵」と言う繋がりで家族になろうと言ってくれた人が居た。
大学在学中に色々な作品展に応募して幾つかのささやかな賞を取った事がある。
その受賞式の中で、一人の老人が話しかけてきた。
「今はまだ固いつぼみだが、うちに来てそのつぼみを開花させてみないか?」
同行した友人も飲んでいた飲み物を噴出してしまうほどのセリフに目を白黒させてしまうも、老人の周囲に居た細身の男がその老人を「先生」と呼び嗜めた。