「何か不思議な人だったねー」
帰り道で唐突に藍嘉さんが言った。
「ね、ハク」
「そうですね…」
僕も思う所はあった。薫流さんから感じた違和感、そして、晃さんのあの発言。
「巳波組は唄子さんで何がしたかったんでしょう」
「うーん…ねえリョウくん」
「…何や」
「唄子ちゃんはどんな能力なの?」
これまで、椋汰さんに巳波組について問わないのは暗黙の了解だった。傷を抉るようなものだと、いつか藍嘉さんがぼやいていたのを覚えている。
それを今、藍嘉さんが解禁したのだ。
「……」
「無理を承知で訊いてるの」
「…そう、やな。簡単に表現するなら…《創る》」
「創る?」
「《生み出す》でもええ」
何かを生み出す、すなわち創造。いつの時代も重宝された、所謂根本的な、神々の、能力。
なるほど、巳波組が手放したくないわけだ。おそらく唄子さんは外の景色を見たことがないのではないだろうか。