渋々謝罪しているといった感じだ。晃さんは次に椋汰さんの方を見た。
「椋汰」
「……」
「久しぶりだな」
「あんたとは赤の他人やろ」
その突き放した言葉の裏には、椋汰さんのどんな感情が込められているのだろう。脳内で分析していると、晃さんの背後から糸目の男性が現れた。動物に例えたら間違いなく狐(果てしなく失礼かもしれない)だし、それに、彼には右腕がないようだ。
「なあ」
唐突にこの暗い空気に飛び込んだ勇気ある空気読めないさんは、紛れもなく綾兎さんであった。
「そろそろ、何があったか説明してくれよ。俺たちも暇じゃないんだ」
「…その件に関しましては私から」
糸目の薫流さんは経緯を事細かく話しだした。それを簡単に要約すると、こうだ。
今日未明、唄子さんの声と微かな物音に目を覚ました薫流さんは召集をかけ中庭に出向いてみると、僕の姿をした誰か(以下擬きA)が気を失っているらしい唄子さんを抱き上げているところだった。薫流さんたちの存在に気付いた擬きAは唄子さんを抱いたまま一瞬で薫流さん以外を殺し、薫流さんの右腕を切断して逃走。
「…まるで死神だ」
晃さんがポツリと呟いた。