「……ハク」
「はい」
「ハクってあーゆー女の人が好みなの?」
「いえ、僕はもう少し明るい女性の方が……何故ですか?」
「…別にー?」
それきり会話は途切れ、重苦しい空気が僕らを包む。僕は佳乃さんが淹れてくれた緑茶を啜りながら、真正面に座る椋汰さんを盗み見てみた。すると、不機嫌そうな中にも確かに哀切の表情が表れている。
「あっ、ズルい!何でハクがリョウくんばっかり見つめてんの?!」
「何やハク、惚れてもうたん、」
「違います」
「…即答せんでもええやろ」
溜め息をついた椋汰さんの機嫌は上向きのようである。ただ、哉勒さんだけは依然無表情のままで(いつものことだが)一言も話そうとはしない。
「ロクさん」
「何だ」
「僕の思い過ごしだといいのですが…何だか嫌な予感がします」
「…具体的に言え」
「この屋敷、血の匂いがします」
僕がそう言い終わるかしない内に前後の襖から黒子たちが現れ、僕を、包囲した。