「…可愛いな、もう」
「深宏の方が可愛いよ」
「……うん」
こういう所は藍嘉さんに似てるんだよな、なんて不謹慎なことを考えながら彼の大きな手に身を任せた。
「…深宏?」
「……眠い」
「じゃあ先お風呂にしようか」
「……」
「どうかした?」
「…ご飯がいい」
「今日はうどんだよ」
僕と凛太郎が出会ったのは約2年前、僕の両親の葬式の日。ちょうど雨が降っていたと記憶している。凛太郎は僕の母方の遠い親戚、つまり、ある能力を受け継いできた家系らしいが、今までそれらしき兆候を見たことがない。よって、僕の能力も凛太郎には明かしていない。人外の世界に取り込んでいいのは、人外だけなのである。
「凛太郎」
「ん?うどん嫌?」
「…さっきもし僕が結婚してもいいって答えたら、本気で、」
「僕は深宏としか結婚しないし、諦める気もない。父さんが反対したら逃避行する覚悟だってある」
「…ちゃんと意味分かってるし」
凛太郎は僕にとってかけがえのない存在の、少々扱いに困る同居人である。