ぶっきらぼうに答えるとまた社長は口を閉ざしてしまった。
「……」
この沈黙が余計に緊張感を呼び寄せている気がする。
何か喋ってよ……。
沈黙が重い。
あたしはたまらず外の景色へ視線を移した。
そしてあることに気づく。
「ねぇ、こっちマンションとは逆方向じゃない?」
「誰がマンションに戻ると言った」
「え!?」
「空気を読め。オレはもう変態スイッチが入ったんだ」
さっきから『変態スイッチ』を連発する社長。
もしかしてこの言葉、気に入った……?
「ここからマンションまでどんなにスピード出しても1時間かかる」
「たった1時間じゃん!!」
1時間なんて、朝の通勤時間と変わらない。