「友里は金のためにオレを利用した。有栖川の人間になれば金の心配はいらないから。……そう言っていた」
「……」
本当にそうなのかな……。
お金だけが目的だったとはどうしても思えない。
「友里さんは、大河くんの側に父親が当たり前のようにいる、そんな普通の生活を送らせてあげたかったんだと思う」
きっとこれが一番の理由。
『父親のいない子にしたくない』と彼女は言っていた。
だからきっと、お金なんかじゃない。
「社長は大河くんを可愛がっていたでしょ?大河くんだって懐いていただろうし。……そんな2人をずっと見てきた友里さんは、そこに理想の家族像を見てしまったんじゃないかな」
あたしは数回しか彼女に会ったことはないけれど、大河くんのことを第一に考えてる人だってことはすぐに分かった。
「家族か……。大河ができた時、男には堕ろせって言われたらしい。だけど友里は、どんなことをしても生むんだって言い張って、大河を生んだ。だけど今、それを後悔することもあるんだって言ってた」
「後悔?」
「大河ももう、自分の家が他の家とは違うってこと、理解できる年頃だから」
友里さんの切ない思いと、大河くんの幼く傷つきやすい心を考えると、やりきれない思いでいっぱいになった。
ギューッと社長にしがみつく。