だけど、1つだけ浮かぶ疑問。
「どうして社長の前に現れたんだろう」
社長の子供だとウソまでついて。
「男に捨てられてボロボロになった時、偶然テレビでオレを見かけてそれで……」
まるで続きを話すことを躊躇っているように、急に社長が黙り込んだ。
「それで?」
だけどあたしは知りたい。
もう何も隠してほしくないから。
そんなあたしの気持ちが伝わって、社長もポツリポツリと話し始めた。
「あいつ、すげー額の借金背負わされてんだよ。大河の父親が女と逃げたのは、借金取りから逃げるため。だけど借りた本人が行方知れずで……必然的に連帯保証人の友里がその全てを背負わされた」
「そんなのヒドイ……」
「あぁ。……だから友里は金が必要だった。借金の返済と、大河を育てていくための金も」
「お金?」
「大河って名前をつけたのも、オレに自分の子供だと思わせるためだったらしい」
友里さんがやっていることは確かに許されることではないけれど、何が正しいとか、そんな当たり前のことも分からなくなるくらい、精神的に追い詰められていたに違いない。