しばらく泣くと
あたしも落ち着きを
取り戻し
「ありがとうございました」
と言いながら
男の人の腕の中で
振り向いた。
その瞬間。
世界が止まったような気がした。
男の人の顔は
調度よく
肌が焼けていて
鼻は高く目は切れ長で
すべて見透かされているよう。
唇は薄く自信に
満ち溢れている。
あたしはしばらく
見入ってしまっていた。
「ん?何かついてる?」
と優しく微笑む
男の人の目元は
少しだけ垂れて
無邪気な子供の
笑顔みたいだった。
「あっ、いえ。
助けていただいて
ありがとうございました」
と言って
ペコッと頭を下げると
男の人は
「今度から気をつけてね」
と言った。
「はいっ」
とあたしが言うと
男の人は
あたしの頬に
手を添えてきた。