叶子は答えなかった。いや、答えられなかった。

(私は……)

 答えが見つからないから。


 高輪は黙っている叶子をしばらく見つめていたが、やがて諭すような口調で話し始めた。

「君の真面目な性格なら、確かに滝沢の校風は合うかもしれない。
 ただね、入学してからもかなり頑張らないといけないよ。
 入学してから3年間、目標があれば耐えられるかもしれないけれど……まだ将来のことは決めてないでしょう?

 蔭山なら、その点自由な校風だから、将来の可能性も見つけやすい。それに個人指導の授業も充実し――」

「叶子は滝沢高校に行くんですっ」

 高輪の話を遮ったのは勿論叶子ではなく、母だ。

「ね? そうでしょう叶子ちゃん。あなたは滝沢以外の進路は考えてないんでしょう?
 高輪先生、生徒の意思を尊重するのが教師の役目のひとつじゃないんですか。そもそもランクを下げろなんて、叶子に限ってそんな――」