母は、当時、やたらと食事にうるさかった。間食もきめられたもの。おやつは大抵、さつまいもやとうもろこし。
たまに手作りの素朴なホットケーキ。


友達の家で出る、ポテトチップスやチョコレート、コーラが羨ましく、楽しみに遊びに行ったりした。

ただ、そういうものを食べたことは、内緒にしていた。



お祭りの屋台は、ソースの焦げた匂いでいっぱいだ。

『叶子ちゃん、何食べたい?』

母の発言に驚いた。一度も屋台の買い食いなんて許して貰ったことはなかった。

だから、何がいいのかわからない。

『たこやき? 焼きそば? ああ、イカ焼きにしようか―』

母は食べきれないくらい、色々買ってくれた。

タコの入っていないたこ焼きは、びっくりするほどソースが辛かった。でも美味しかった。

『―こんな辛いもの、身体に悪いからだめ』
そう云って取り上げられるのではないかと叶子は怯えた。

しかし、母は一つ食べるとくすくす笑った。
―やだ、これタコが入ってないじゃないの。

そして、叶子にタコ抜きのたこ焼きを勧めるのだった。

――ほら、もっとマヨネーズつけてごらん。

いつもは油っこいから、と許してくれないマヨネーズをたっぷりつけて、口元まで運んでくれるのだった。