今までよりも、深刻な表情で言う雅樹に隆志と幹男の怒りも休息になえていく。

考えてみれば、人の手のひらにシャープペンを突き刺すなど雅樹の性格からしてありえない、そうしなければならない不測の事態が俺達に起きているのだろう。

そう判断し、隆志は雅樹の言葉に従う事にした。


「解った!雅樹どうすればいい?」


雅樹は、幹男のほうに視線を向ける。


幹男は、まだ納得いかないようだったが、二人の様子から渋々同意するように無言でうなずいた。


雅樹は、改めて隆志と幹男に言う。

「いいから、二人とも絶対に寝るなよ!」

「・・・寝るな?」

「・・・なんで?」

二人は、またしても意味不明な雅樹の言葉に戸惑ってしまう。


雅樹は、二人にも理解できるように自分が判断した考えを打ち明ける。

「眠りなんだよ、眠り。いなくなった奴はその前に必ず眠っていたんだ」

隆志が雅樹の言葉に理解したように答える。


「あっ!そういえば、2時間目にいなくなっていた塩田は1時間目に眠っていたな」


隆志に続き、稔も答える。


「稔も!稔も眠っていたよ!」


「そう、眠る事により、いなくなる現象がこの教室で起きているんだ」


隆志と幹男は、雅樹の言いたい事は理解できたのだが、いまだ納得できないことがある。


「でもさ、眠った者らがいなくなったのは、解ったけどなんでその事に教室の誰も気づかなかったのさ?・・・普通ありえないだろ・・・?」


時々的をえるような言葉を発する幹男に感心しつつ、話しを続ける雅樹。


「幹男の言うとおり、いなくなる時に誰にも気づかれないなどという事は本来ありえない、それでも教室のほとんどの生徒がいなくなっている、いなくなる時を誰にも見られず、気づかれることも無くね?」



雅樹の言葉に、信じられない表情をする隆志と雅樹。



「誰にも気づかれないなんて事があるのか?」



「ある!」



隆志の質問に、はっきりした口調で答える雅樹。


その表情は、何かを確信したような自信に満ちていた。