薄れ行く思考を再び呼び起こすため、雅樹は右手に持っていたシャーペンを左手に当て、ゆっくりと力を込め突き刺していく。


「ぐっっっっ・・・」


左手から強烈な痛みが脳に伝わり、雅樹の思考も徐々に回復してくる。


しかし、何故か体に力が入らない・・・?


まるで違法なドラッグの副作用のように雅樹から肉体の自由が失われているのである。


雅樹は、再び右手に力を込めて左手にシャーペンを突き刺す。


さっきよりも強く・・・深く・・・ゆっくりと・・・


「ぐうぅぁぁっっっっ」


左手から血が染み出してきたのと同時に、雅樹の体に感覚が戻ってくる。


「よし!動ける」


自分の体じゃないような感覚の中、雅樹は後ろを振り返る。


隆志も幹男も眠ってしまっている。



二人の肩を、激しく揺り動かすが二人とも目覚めない。



「起きろ!隆志、幹男!」



何度、起こそうとしても二人とも目覚めない。



「・・・しかたない・・・」


雅樹は、隆志にシャープペンの先端部分をあて突き刺していく。


「痛った!」


右手の激しい痛みに目覚めた、隆志は自分の目に映る雅樹の姿に驚いた!


雅樹が自分の右手にシャープペンを突き刺しているのだ。


「ま!雅樹!なにやってんだよ!」


「よかった、気がついたか」


自分の右手にシャープペンを突き刺しながら笑顔を向ける雅樹。


「よかった?よかったじゃないだろー!・・・痛った!」