雅樹に向けるアイツの表情は、今まで見せた事も無い険しい表情になっていた。


隆志は、雅樹の手を取り席に戻るよううながした。


「雅樹、座ろう」


隆志に手を取られ席に戻る雅樹。幹男もその後に続いた。




カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


アイツは、再び黒板に文字だけを書き込む退屈な授業を始めてゆく。


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


再び教室に、アイツのチョークの音だけが教室内に響き渡る。


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


幹男は席に付く時に、先ほど言えなかった事を雅樹にそっと言った。


「なぁ、雅樹?俺、アイツの名前が解らないんだけど、あいつの名前て何だった?」


幹男の問いかけに、雅樹は驚愕する!


「えっ!」


「あっ!・・・だから、その・・・解んなくて?」


「幹男!今なんて言った!」


雅樹の予想外の反応に、幹男は驚き小声で答える。


「あっ!い、いや何でもない、なんでも無いから・・・」


自分が的外れな事を言ったと思い込み、顔を伏せながら自分の席に座る幹男。


しかし雅樹は、幹男の一言に衝撃を受け激しく動揺する。


そして黒板に向かって、ひたすら書き込むアイツの背中を見つめながら考え込んでいく・・・



・・・アイツの名前は・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・アイツの名前・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・アイツの・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ