クラスメートの意見は全て、雅樹を否定する。


「今いない奴らは皆、はしかを発病したから早退したんだろ?」


「連絡取れないのは、携帯切って寝ているからじゃないの?」


みんなの言う事の方が、説得力がある。


教室に空席があれば、ほとんどの人は早退したと考えるだろう。


それが自然な考えであり、自分自身が最も納得できる事なのであるのだから。


雅樹の考えの方が異状なのだ。


雅樹は、悲痛な表情で哀願するように言った。


「・・・頼むから、みんな教室から出てくれ!」


しかし、隆志と幹男以外の教室の誰一人、雅樹の言葉を聞き入れる者は無かった・・・


「・・・だめか・・・」


自分の言葉で、みんなを説得できない歯がゆさの中、雅樹は悲痛な表情で隆志と幹男に視線を向けて、決断し重い口調で言った・・・


「・・・隆志、幹男。・・・俺達だけでもこの教室を出よう・・・」


雅樹の決断とは、みんなを見捨てるということであり、雅樹の心は罪悪感でいっぱいになった。


隆志は、雅樹の言う事を全て信じたわけではない。

雅樹の発言はあまりにも突拍子もなく、理解できないことだらけだし、連絡のとれないクラスメートも、ただ携帯の電源を切っているというほうが理解できる。




・・・それでも・・・




・・・それでもだ!・・・



俺は、雅樹の事は子供の頃から知っている。雅樹はいつだって間違った事は言わなかった。


すぐにキレてしまう俺に言葉をかけてくれて、なだめてくれたのは雅樹だけだ。
時には上から物言う事もあったが、雅樹の言葉はいつも俺を正しい方へと導いてくれたじゃないか。





・・・俺が信じなくてどうする!