「なんだそりゃ?佐伯先生達は集団登校拒否でもしているのか?」


担任の佐伯雅子に、ほのかな憧れを抱いている隆志が戸惑いの表情を見せる。


特に学年主任の服部と一緒というところが気に入らない。


「・・・あっ!数学の服部と教頭は犬猿の中だったんだよね・・・?」      

唐突に、遠巻きに話を聞いていた幹男が、雅樹に確認するように叫んだ。


「学年主任の服部と教頭の二人の指導方針の違いとかで、この学校が教頭派と服部派に教師達が二つに別れてしまったんだよね?」


説明的な話しをしながらも、幹男はどこか自信なさげに雅樹に目で再確認するように言う。


・・・幹男、それは俺が前に三人に話した事だろう・・・


心の中でそう思いながらも幹男の言葉を補足するように雅樹は再び話し始める。


「そうそう、幹男の言うように服部が組んだ勉強のカリキュラムに教頭が難色を示したのが事の始まりだったんだよ」


前置きの話だけで隆志たちはもう、雅樹の話に聞き入ってしまっていく。


「でもね、今はそんな事は問題じゃないんだ!」


雅樹の言葉は核心に迫りつつあった。


「問題なのは今日、無断で欠席した教師達の中に中立派の教師が5人もいるということなのさ」


雅樹の言葉がいまいち理解できない三人は、無意識にお互いの顔を見合わせている?


皆の表情を見て雅樹は、このまま話を続けていってもいいものか少し迷ってしまったが、構わずそのまま話を続ける事にした。


「・・・解らないかな? いいかい、今この学校には28人の教師達がいるだろう?」        

雅樹の、少し上からもの言う態度に隆志は心の中でつぶやいた。          


・・・この学校の教師の数なんて知らねぇよ・・・?          


おそらく稔や幹男も同じ気持ちだろうと隆志は思ったが、今はそんなことはどうでもいいことであって、隆志にとって今一番の問題なのは佐伯先生の事だけなのである。


隆志はそのまま、雅樹の話に耳をすました。