「お前…もう一回言って
みな。」


副総長の鋭い眼光があた
しを睨み据える。


「総長引退の影に、風雷
鬼がかんでる、と言いま
した。」


怯えなどしない。この肝
が据わったくそ根性は、
父親似なのか母親似なの
か、そんな事知ったこっ
ちゃ無いけれど。


副総長の睨みを跳ね返す
の如くあたしは冷静な言
葉と表情を見せる。


「誰から聞いた?てめえ
うちの総長ナメてんじゃ
ねえやろな。」

「まさか。ナメてなんか
いやしませんよ。真実を
述べてるだけですわ。だ
から特攻したいと、申し
てます」


吐息がかかるくらいに近
寄って来た副総長をじっ
と見つめ返す。


幾分時間が過ぎたか。


「おい!総長に電話しな
本当の事かどうか確かめ
んだよ。ぼさっとしてん
違う!さっさとしろ!」


誰と言わず、兵隊が総長
に電話をかける。


「副総、つながりました」


声と表情で怯えているの
が一目瞭然の親衛隊の一
人が、副総長に電話をま
わす。


「総長、引退に風雷鬼が
かんでるって本当なんで
すか?今、嘉穂から聞き
ました」


怒りを隠せない声色が、
深夜の駐車場に響きわた
る。その様を、あたしは
煙草をくゆらせながら見
つめていた。


「…何で、裏切ったんす
か総長」


電話は、二言で終わった。


携帯を閉じると同時に、
煙草の火を消す。


副総長が向き直る。


あたしを見つめる目を、
ただ睨み返す。


「狂恋嘩全員に命令な。
3日以内に風雷鬼の連合
を叩き潰せ!嘉穂を筆頭
にやっちまいな!この喧
嘩、負けたら総長の引退
認める。勝ったら…」


茶を濁した。次の一言が
聞けない。


「勝ったら…



総長を潰せ」