家についてすぐ、勝手な
事に晃は眠ってしまった。


あたしは一人で、雑誌の
一ペ-ジを見つめる。何
回も同じ記事を読み返し
てはため息と涙が一緒に
出る。


さすがは母親疑惑が出る
だけあって、考え方も似
ているようだ。置いてき
た娘が会いにきてくれる
だなんて事は期待してい
ないと明言する辺り、周
りには頼りたくない性格。


「期待してない…か…」


こぼれる言葉に、我に返
る。普通母親なら、置い
てきた子供に会いたいと
思うのが普通なのに。こ
の人は全くそんな事考え
ちゃいない。そんな事を
思わせない程幸せな今が
あるのか、再婚した人が
それを許さないのか。そ
れとも今一緒にいる子供
の手前、そう思っている
のか。


ふっと、糸が切れた。さ
っきまで舞い上がってい
た心が急に冷めていく。


あたしは、寂しかった。
今日まで一人で人生切り
ひらいてきたのに、母親
であると思われるこの人
はそうじゃない。


あたしに対して、結局何
も思っちゃいないんだ。
期待なんかしていない。
でも昔…小学生の頃。あ
たしは毎日祈ってた。い
つか、いつの日か、お母
さんが迎えにきてくれま
すように、って。


「神も仏もないんやな」


雑誌を閉じて、晃の横に
潜りこんだ。目を閉じて
も、あたしの瞼からあの
人の笑顔が消えない。悔
しさから来る涙が枕を濡
らす。


「あたしだけ…あたしだ
けなんやな…」


声を押し殺して泣き続け
た。夜が来るまで、ずっ
と。