『きっとあたしの事なんて皆忘れちゃうんだろうね…』



…俺は忘れたんじゃなくて、最初から会ってないと思うけど。





「いつものお前らしくないな」



そう言うと、



『弱気になっちゃう日だってあるよ!』



俺を叩く。





俺はバシバシ叩くのを阻止するために手首を掴んだ。





『情けないよね…
自分が誰なのか、どうして今ここにいるのか分かんないんだもん』



美緒はすこし目に涙を溜めながら言う。



やっぱり自分の身元とか知りたいよな。




思い出せないと悔しいよな。





俺は美緒の手をギュっと握った。





美緒も返すように少し力を入れて握り返す。




「大丈夫だって。絶対思い出すからそれまで頑張れ」



俺に言えるのはこれだけ。






絶対に美緒を助けてやるから。






美緒は、溜めていた涙を手で拭って



『翔…好きぃ』






そう笑顔で俺を見る。