『だからあの“美緒”はあたしじゃない』
「そっか…」
やっぱ大量のカルテから見つける方法は難しいかもな。
…でも、それ以外にここで見つける方法は無い。
『…ねぇ、翔?』
「ん?」
美緒は俺を見ずに、どこか遠くを見つめていた。
『あたし診察した事ない?』
美緒を診察した事…
「多分無いと思う」
一回でも診察した事があれば、うっすらと見た事があるって感じると思う。
でも、最初美緒を見たとき…
何にも思わなかった。
多分、過去にあったことは無いと思う。
『それってただ忘れてるだけじゃないのー?』
「1日に何十人って人を診察するんだぞ?
全員覚えておくなんて無理」
それを聞いて美緒は
はぁーと
また溜め息を吐く。
俺だって医者になったばっかりだし、そんなに多くの人を診察してない。