「高校生の子は?そうかも…」
『怪我してこの病院に来たみたいで、外科でお世話になってた』
美緒はカルテの内容を思い出すように頭を押さえる。
「それが美緒なんじゃ…」
『ううん、あたしじゃない』
はっきりと否定して首を振る。
「なんで?」
食べ終わったサンドイッチのゴミを袋に入れながら聞くと、美緒はすっと腕を俺の前に見せてきた。
『その子ね、ガラスで手首を思いっきり切っちゃったみたいで15針も縫ってた』
美緒の手首に視線を向けると…傷は無い。
「でもさ、死んだときに怪我なんて消えるんじゃないのか?」
死んだ後の仕組みはどうか良く分からないけど。
『ううん、多分そんな事ない』
美緒は今度は右肩を俺に見せた。
肩にはうっすらと小さな傷があった。
『これ、死ぬ前の傷だと思う』
「死んでから付いたんじゃ?」
俺の言葉に美緒はベンチから立ち上がると、傍に落ちていた木の枝を取った。
そして辺りに誰もいない事を確認すると、戻ってきた。
…俺には普通に枝を持って帰ってきてるように見えるけど。
他の人は木の枝だけ浮いてるように見えるんだろうな。