「…どうしたんだよ」
何でこんなに怒ってんだ?
…俺、何もしてないと思うけど。
『あたしは一生懸命あり得ないほどのカルテ見てたって言うのに、翔は女の子と仲良く話してたんだね』
美緒は俺の目から視線を外さずに言う。
「あれは違うって!患者さんだし…」
そうだよ、患者さんが何か相談があるかもしれないのに無視するわけにはいかないだろ。
何か聞きたい事があるのかって思ったから振り返って話を聞こうとして…
そしたら【俺の連絡先教えてください】だったんだ。
本当は美緒かと思って振り返ったんだけど。
『患者さんの連絡先を教えてもらったりするわけ?』
いつもみたいに冗談っぽくヘラヘラして言うんじゃない。
あきらかに美緒は本気で怒ってる…
「あれは無理やり…俺が断ってたの見てただろう?」
俺は連絡先教えられないってちゃんと断ったし。
そしたら自分の連絡先を書いた紙を渡されそうになって…。
周りからじろじろ見られるのが嫌だからどうにかしようと、受け取ろうとしただけ。
『最終的にはあたしが紙を取るまで翔は受け取ろうとしてたじゃん』
「…ごめん。中々諦めてくれないから一応受け取って後で捨てればいいと思ったんだ」
あまりにも美緒が怒りと寂しさが混じった顔をして真っ直ぐ見てくるから、謝ってしまった。