「あまり…眠れなくて。飯もあまり腹減らなくて」
「それで弱ってたから風邪でも引くんだろ。一応点滴打つか?」
…点滴。
打った方がすぐに楽になると思うけど、なるべく早く家に帰りたい。
“今日こそ”美緒が帰ってくるかもしれないから。
「嫌、帰って寝ればすぐに良くなると思うので。帰ります」
俺はそう言って立ち上がろうとしたが、それを真山先生に止められた。
「俺が送ってやる。こんな状態で運転出来ないだろ」
「でも、先生仕事が…」
「家でやる。先に車の所まで行ってろ。ロッカーのキーを渡せ」
俺の前に手を出す先生に、俺は白衣を脱いでそのポケットからロッカーの鍵を取り出すと、白衣と一緒に渡した。
先生はそれを受け取ると部屋を出ていく。
俺もその後に続いて部屋を出て、駐車場へとゆっくり歩きだした。