『ごめんね…?あたしの我儘だって事は分かってる』
なんでいきなりこんなこと言いだすんだ?
いくら美緒に言われようと、
俺は…
「…俺は止めない」
美緒の手を握りながら俺の意志を伝えた。
『何で? もういいから…』
「美緒、身元が分からないと成仏出来ないだろ?』
身元が分かれば成仏できるかもって言ったのは美緒だろ?
『身元が分かった所でどうしようも無いじゃん。よく考えたらさ。あたしは死んでる訳だし、家族が居たってあたしは幽霊だから話す事もできないし。
第一身元が分かったから成仏できるって決まってる訳じゃないよ?』
「何があったんだよ…? いきなりそんな事言いだして!」
俺はつい力んでしまい、強い力で握ってしまった。
でも、痛くも何ともない美緒はいたって普通の顔だった。
『成仏しなくても良いって思い出したの! この世界に残っていたい、消えたくないって思ったの!』
俺を見つめていた美緒の瞳にはうっすら涙が浮かんでいて、美緒はそれを隠すかのように下を向いた。