『あーあ。家出ちゃった』
しばらく飛んだ後、地面に着地してゆっくりと歩いた。
すぐ家を飛び出したから、裸足なんだけど。
裸足だからって痛いわけでもないし、ただ汚れるだけだし。
これからどうするか。
あたしはびしょ濡れのまま、病院の中へと入った。
『真山先生…』
病院のいつもの部屋に真山先生はいた。
今日は残って書類片付けるって言ってたもんね。
真山先生はあたしを見て目を少し見開いた。
そして、何も言わずにタオルを取り出してあたしに投げた。
「まず拭け。誰か来たら不審に思う」
真山先生はそう言うと、ぞうきんらしき布であたしが落とした水滴を拭きはじめた。