『…分かった。離して』
あたしは翔の胸を押して離れた。
そして浮いた。
涙は何故か止まらずどんどん溢れてくる。
「…美緒?」
あたしが翔の前から消えたらいいんだよね。
そしたら、もう無理してあたしを探す事もないよね?
離れたくない。
でも、離れなきゃ。
『そんなに成仏して欲しいなら、あたし消えるよ』
「何言って…」
翔はずーっとびっくりしたような顔。
『ごめんね、翔。成仏は出来ないけど、翔の前から消える。本当にごめんね?』
そう言ってあたしはリビングのドアを開けて走りだした。
「美緒!!」
後ろから翔が追い掛けてくる足音がする。
あたしは玄関のドアを開けると、そのまま空に浮いて下まで降りた。
「美緒!」
あたしを呼ぶ声が何度も聞こえたけど、あたしは振り返らず飛んだ。
外はあたしの涙を隠すように雨が降っていた。