部屋が真っ暗になると、私の布団の中に紅夜さんが入ってきた

大きな手が私の体を触ってくる

「嫌なら抵抗しろよ」

抵抗するわけないじゃない

旅行するってことはそういう関係になるっていう意味でしょ?

それくらい私だって知ってるよ

「大丈夫です」

「そう…か」

紅夜さんの声に力がないように感じた

本当は紅夜さんのほうがしたくないのかも…

年下は好きじゃないって言ってたし

『綾さん』って人と重なって嫌なのかもしれない

「紅夜さんも…無理しないでください
私のような人間は好きではないのでしょう?
旅行ができただけで、私は嬉しいんです
それ以上のことは望みません」

紅夜さんの手が私のお腹の上で止まった

「嫌い…じゃないから、怖いんだ」

「え?」

「何でもない
長い運転で疲れた…今日は、もう寝る」

紅夜さんはごろんと私の横で頭を布団に預けると、全身の力を抜いた

私は紅夜さんに背を向けると、カーテンを眺めた

こんな近くに紅夜さんがいたら…眠れないよ

「俺に背を向けるな」

「はい」

私は体の向きをかえた

目の前には、紅夜さんの首から鎖骨が見える

真っ暗なのに、なぜかキスマークだけがはっきりと見える

見たくないのに

誰かがつけたかわからないキスマーク

見たくないよ……