「愛果は何て言ってた?」

「覚えてません」

『綾さんと別れてから、紅夜はおかしくなった!』なんて言えない

「そう…か」

紅夜さんは私に背を向けた

携帯をまた手にすると、今度は電源を落とした

「いいんですか?」

「ああ」

「私は構いませんよ?」

「俺が切ったんだから、いいんだよ」

「そうですか」

私は足を崩すと、再び布団の中に足先を入れた

「なあ…そろそろ寝るか」

「はい」

私は文庫本の隣に置いてある携帯で時間を確認する

間もなく日付を跨ぎそうだ

あと数分で11日になる

携帯には着信の形跡はない

もしかしたら…朱音ちゃん、気を利かせているのかな?

できれば、朱音ちゃんのメール、届いておいて欲しかったな