「愛実?」

頭上から紅夜さんの声がして、私は上を向いた

紅夜さんがすごく心配そうな顔をして立っていた

「あ…迷子になっちゃって…受付で紅夜さんのお父さんに会って…って?
え?」

ええ?

私は紅夜さんのお父さんを見て、驚いた

さっきまでの、『のほほん』とした雰囲気は消え、お父さんはびしっときりっとした緊張感のあるオーラを放っている

それは、紅夜さんの携帯電話から漏れてきた厳格な父親のイメージにぴったりな人に、変わっていた

に、二重人格?

「綾は?」

お父さんが低い声で質問をする

「あ、点滴、打ってる
明日の朝には、帰っていいってさ」

「そうか、わかった
お前はもう帰るといい」

「ああ、そのつもりだけど」

紅夜さんは視線を動かすと、私を顔を見る

「帰ろう」

「え…あ、うん」

私は紅夜さんとお父さんを交互に見やる

「沖野さん」

「は、はいっ」

紅夜さんのお父さんに呼ばれて、私の背筋がぴんと伸びた

さっきまでのお父さんなら、気にせずに首をかしげるくらいだったんだろうけど

凄い強い気迫が感じられて、私もつい緊張してしまった

「君に会えて良かったよ」

「はい、私も…です」

私はペコっとお辞儀をした