「夫婦って、外から見ただけじゃわからない亀裂があるんですよね
自分たちも気づいてなかった溝とか…ふとした瞬間に気がついて、相手を受け入れられなくなって、すれ違って
でも離れてみたら、良い関係に戻れたり…とか
朱音の母とは、今でも良い関係です
私の親友であり、良き相談相手でもあります
彼女にも生活はありますから、今は私の秘書をお願いしてます」

仲がよさそうに聞こえるけど…なんで別れたの?

私は不思議で、首をかしげると、お父さんがクスクスと笑った

「沖野さんが、私くらいの年になったらきっと理解できるようになりますよ
綾とは…この先、私との間に愛が生まれなくてもいいと思ってます」

え? 何を言って…

紅夜さんのお父さんが、にこにこと笑っている

「綾自身、誰かを愛するという感情が欠落してますから
ただ…そういう人間と、紅夜が付き合うのは父として許せなかった…それだけです」

この人って…なんだか凄い人だ

人として大きいのか…小さいのか

それすらわからなくさせる

何度も結婚と離婚を繰り返してて、嫌な人って思ってたけど

話してみると、そう感じさせない雰囲気を持ってて…不思議な人だよ