「飯、食いに行くか
どうせ朝飯も食ってないんだろ?」

「え? あ、うん」

私は下を向いたまま答えると、紅夜さんがぽんぽんと頭を叩いた

テーブルに置いたキーケースを紅夜さんは、大きな手の中に入れる

「ごめんなさい」

私は小さな声で謝る

「なんで?」

紅夜さんが明るい声で言うと、首をかしげた

「だって…その…」

凄く甘い時間を…私のお腹の音で、壊しちゃったから

私はもじもじと指を動かして、そっと紅夜さんの顔を見た

紅夜さんは、温かい笑みで私を見下ろしている

「続きは、腹ごしらえしてからでも遅くねえだろ?」

つ…つ、続き?

続きぃって…もしかして…ですか?

なんて聞けるわけないじゃない

私はまた頬が熱くなるのがわかった

きっと私の顔は熟れたトマトのように赤いのだろう

紅夜さんは、おかしそうにクスクスと笑っている

「可愛いな、愛実は」

紅夜さんは私に背を向けると、玄関に歩きだす

私も、冷たい手で熱くなった頬を冷やしながら紅夜さんの後を追いかけた