「ありがとうな、部屋で待っててくれて
愛実の顔を見た時は、嬉しかった
ホッとした
マジで、嬉しかったんだ」

紅夜さんが頬を触っている手が、私の顎に移動した

くいっと私の顔をあげると、紅夜さんの顔を近付いてくる

私は瞼を閉じて、唇に全神経を集中した

そっと触れるだけのキスなのに、どうしてだろう

すごく身体が熱くなるのが、わかった

昨日の苦いキスとは全然違う

味なんかしないのに、甘いキス

まるでココアを飲んだ後に、キスをしたみたいな甘い味がした

紅夜さんの手に力が入る

腰にあるもう一方の手で、私の身体をぴったりと紅夜さんの体に添わせた

私の顎にあった紅夜さんの手が移動して、後頭部に向かう

朝、軽く梳かしただけの髪を長い指で絡ませて毛先へと滑らせていった

『ぐうぅぅ』

静かな部屋で、重低音が鳴り響いた

私は顔が炎がついたみたいに、熱くなる

恥ずかしいっ!

こんなときにお腹が鳴るなんてっ

紅夜さんの唇が離れると、私は下を向いて、ぎゅっと自分の服を握りしめた