紅夜さんの優しい声が、私の心を穏やかにしてくれる

肩の力をふっと抜くと、抱きしめられている紅夜さんの腕にそっと手を触れた

温かい腕に、私の冷たい指先が触れる

「愛実、こっちを向いて」

私は紅夜さんの腕の中でぐるりと回転する

紅夜さんの力強い瞳に、私が映っているのがわかった

今にも泣き出しそうな私が、紅夜さんの瞳の中に立っている

やだっ…

私、すごい変な顔だ

笑顔を見せないと…

口を引っ張り上げて微笑もうとすると、紅夜さんの手が私の頬に触れた

「無理に笑わなくていい
その顔も、可愛いから」

紅夜さんがにっと笑うと、私を抱き寄せて背中を優しく撫でてくれる

「俺さ、ずっと不安だったんだ
部屋のドアを開けたら、愛実が居なくなってるんじゃねえかって
早く帰りたいのに、玄関のドアを開けるのがすげえ怖かった」

「だって、帰るなって…」

「書いても、帰るときは帰っちまうだろ?」

うん、まあ……帰ったほうがいいかな?って気持ちがあったのは確かだけど

『帰るな』って言葉があったから、私はここで待てたんだよ?

不安と闘えた

紅夜さんの帰る場所に、私が居ていいんだって思えた