興奮してよほど疲れたのか、カリナはぴくりともせずスースーと寝息をたてる。


「後悔は、していない。あれは、カナンのために必要な戦いだった。

俺が攻め入らなければ、カナンはもっとひどい状況になっていたと思うからだ」


リリティスは、カルレインのついたため息が零れ落ちるのが、見えたような気がした。


「でも、人間は駒じゃない。

理由はどうあれ、そこで死んだ者たちの事を決して忘れてはいけないと思うんだ。

俺はそれまでも、多くの返り血を浴びてきた。

人々が、俺の事を軍神と祭り上げるくらいにな。


俺の子どもたちは、どうあがいても俺の子であるという呪いから逃れることはできない。

血の繋がりが、そうはさせないだろう。


だがな。

ファラは、あいつは、俺の呪われた血をただの一滴も受け継いじゃあいない。


だから」


そこまで一息に語ってから、カルレインは息を継いだ。


「あいつに、選んでもらおうと思ったんだ。

俺のような人間と、違う世界で生きることも可能だってことを、あいつに教えてやりたかった」