早朝からおめでたい話題に包まれたカナンの人々は、城の中も外もお祝いの雰囲気一色に染めれていた。


ホウト国との外交問題で、一触即発になりかけたことなど、一般庶民が知る由もない。


カルレインがカナンの王となってから、この国は大きな戦もなく、

適正な農地改革に伴って、ゆるやかな発展を遂げていた。

もとが侵略者であるにもかかわらず、カルレインはこの国で絶大な人気を博している。


リリティスは、彼女の父親が賢王とたたえられる人物であったことに加え、

その柔らかな雰囲気が人々に愛されていた。


その国王夫妻に久々の王女誕生。

街では盛大な祭りが催され、どの人々の顔にも笑顔があった。


ただ一人、城の部屋に閉じこもる少年を除いて--。