室内に朝日がさし始めた。
もうだめなのではないか、そんな雰囲気が支配しかけたとき、
ファラが、その空気を打ち払うような大きな声を出した。
「私もやる!」
蒼白になった顔のまま、しかし瞳だけは輝きを失わず、
ファラは寝台へあがるとルシルと反対側に腰をおろす。
「母様!負けちゃだめだよ!
ここであきらめたら、頑張ってる赤ちゃんに怒られるんだから!」
もう見たくはない。
誰かが死ぬところを、手をこまねいて見ているだけなんて。
ファラの声に押されるように、ルシルが強く頷いた。
「リリティス様。もう少しです。
もう一度、やってみましょう!」
リリティスの喉はかれ、声にならない。
それでも、懸命に頷いて、体勢を整える。
肩の下に毛布を敷いて、リリティスの上半身を少しだけ起こした。
「いくよ?母様」
ルシルとファラの手が、リリティスの腹に重なる。
「はい、1、2、3!」
部屋の空気が一つになり、心の中で誰もが一緒に数字を唱えたその時。