ソードの知っている家族とは、お互いにけん制しあうものだった。

いかに自分が高い能力を有しているかをそれとなく主張しあい、

決して腹の中は見せない。油断すればやられる。


もしもそれが、本当の親子ではないルビドたちだったから、という理由をつけたとしても、やはり納得はいかない。


ソードの産みの母は、酒場で踊り子をしている気まぐれな女だった。

機嫌のいいときにはソードを可愛がり、機嫌の悪いときにはののしり、時には暴力を振るう。

そして寂しいときには、自分を置いていかないでくれと泣きながらソードにこびる。

酒を飲んでは暴れ、まともな愛情を注いでもらった記憶などない。


時々、彼女が口にする意味不明な言葉の端々を拾って、ソードなりに組み合わせた話では。


彼女は、ソードの父、つまりルビドの甥と男女の仲になり、将来を約束された。

しかし、ソードを身ごもったとたん冷たくされ、捨てられる。

子どもを産めば、もう一度振り向いてもらえると思った彼女は、ソードを産んだ。

しかし、ソードの父が亡くなり、彼女の人生は転落の一途をたどる。

子どもなど産まなければ良かった、ということらしい。



・・どうせ僕は、産まれて来なければ良かった人間だ。



ルビドにも捨てられ、お情けで生かしてもらっているのだから。