短いため息を落とすと、


「カルレイン様は、昔から規則を破るのがご趣味のようでしたけど、

まさか、出産にこんな大勢の人間を立ち合わせようだなんてね。


オルメ様のおっしゃるとおり、もっと厳しくしつけておくべきだったと」


ルシルは早口でまくしたてた。

自分を育てた乳母の名前が出てきたことに、今度はカルレインがあたふたとなる番だ。


「何を言っている!

俺は、王だぞ。王が規則を破ったりすれば、国が正常に機能しないではないか。

そんな覚えは、一度もないぞ」


心外だ、という風に、カルレインは腕を組み座ったままの姿勢で背筋をそらす。


お忘れならお教えしますよ、と言って、ルシルはたんたんといくつもの事例を並べ始めた。


行き先も告げずに出かけること、身だしなみを整えず食事をすること、

独身時代から取次ぎを待たずにリリティスの部屋に侵入していたこと、

赤ん坊が産まれるたびに、部屋の前で大騒ぎしたこと、などなど。


「え?

父様って、結婚もしてないのに勝手に母様の部屋に入ってたの?」


声を上げたのはファラだったが、その場にいる誰もが、カルレインをうろんな目で眺めている。