そうか、という言葉と同時に、ルビドの顔に溜まった脂肪が大きく動いた。

目じりが下がり、笑いじわがいっそう目だって存在を誇示する。


「それで、リリティス王妃の方は、どうなりましたか?」


男が尋ねた瞬間、

ダン!

ルビドが、飲み干した椀を、勢いよく机の上に叩きつけた。



・・しくじったのか。存外こいつもつかえない。



若干、落胆の色を見せたものの、最初から王をあてにしていなかったのか、

男は、それ以上何も口にはしなかった。


「まったく、わざわざ祭りを催してまで口説き落として、

やっとカルレインをわが国におびき寄せたのに。


青二才の息子なんぞを寄こしやがって!

おかげで、わしの計画は、丸つぶれだ!」


ぶつぶつと垂れ流される文句は、まるであちこちの壁に当たって跳ね返るようだ。

何度も同じことがこだまのように繰り返され、

うんざりだな、と男が思い始めた頃、ルビドは、男の存在を思い出した。


「そうだ。まだわしの計画は、頓挫したわけではなかったな」