漆黒の闇が、砂漠の熱をすっかり消化しつくした頃、
人目を避けるようにして、ルビド王の寝室に忍び込む一つの影があった。
嬌声の響く甘ったるい部屋に、男はわずかに眉間のしわを深くしたが、
すぐに気を取り直して寝台の足元に跪いた。
「お楽しみのところ、申し訳ございませんが」
低い声が、寝台の主の動きを止める。
ルビドが何かしら話しかけると、それまで恍惚の表情を浮かべていた女は、
惜しげもなく妖艶な肢体をさらしたまま、その場を後にした。
どこにでもいそうな、ただの中年の男に見えるその王は、
汗だくの体に衣を引っ掛け、水の入った椀を口にした。
「うまくいったのか?」
水を飲み干しながら、床にいる男を見据えるその眼光は、
計算高く、怜悧なそれ。
とても、ただの年寄りには見えない。
「二人とも、砂漠に連れ出しました」
男は頭を下げたまま答えた。