「さぁ、リリティス様。
少しお休みください。まだお体を労わりませんと」
しばらくの笑いに包まれた楽しいひと時が過ぎると、
ルシルはリリティスに横になるようすすめた。
「そういえば、お腹の子は、順調なのですか?」
エリシオンはリリティスの腹に目をやる。
そこは、膨らむどころか、むしろ細くなったような気がするほどだ。
「大丈夫よ。
つわりがひどいので少し辛いけれど、それはあなたたちのときも同じだったし」
本当は、多少の不安もある。
最後に子供を産んでから、すでに13年。
年月の経過は、当然体への負担を増すだろう。
しかも、こんなときに頼るべき主は不在で、娘の安否も気遣われる。
しかし、リリティスはそんなそぶりを微塵も見せなかった。
年月は、彼女から体力を奪うと同時に、
少女を女から母親へと変化させていたから。
「ならいいのですが」
いつもと変わらぬリリティスの笑顔に癒されて、
エリシオンは、守るべき存在に自分の方が守られているのだということを実感した。
この笑顔を、なんとしても無事に守り抜かねばならない。
エリシオンは、新たな気持ちで部屋を後にした--。