それよりも、とエリシオンは話題を転換させる。
「ファラの悩みなどを知りたくはございませんか?」
「まぁ!あの子の悩みですって?!」
二人の話の邪魔をしないようにと、部屋の隅に控えた侍女のルシルまでが、
そのありえないエリシオンの言葉に聞き耳を立てた。
まさか慣れない国で辛い目に、と涙ぐむリリティスに、エリシオンは慌てて両手を振る。
「いえ、そうではなくてですね。愛について悩んでいるそうですよ」
視線を彷徨わせるリリティス。
ぽかんと口を開けるルシル。
二人の視線が絡まったとき、同じ間合いで吹き出してしまった。
「まぁ、それは・・・」
ルシルが苦笑して、ファラ様もずいぶん大人におなりで、と続ける。
いや、あの子も真剣に悩んでいるんだ、とエリシオンが、わざとらしく訳知り顔をすると、
三人のクスクスという笑い声が、部屋の中いっぱいに広がっていった。